山田 葵(昭和58年文学部文学科卒)

【略歴】やまだ・あおい 1996年から2000年、俳句誌『泉』の石田勝彦氏、綾部仁喜氏の指導を受ける。以後、冊子『ひょうたん島通信』で作句を続ける。2005年、『椋』創刊より入会。以後、石田郷子氏に師事、現在に至る。俳句は川島葵として発表している。俳人協会会員。句集『草に花』『ささら水』(ふらんす堂)。

寄稿

自粛中のオタクはやっぱりオタクー

例えば俳句

『ささら水』  自粛の日々の中で、俳句をしていてよかったと思った。運動が大の苦手で、オタク傾向が強い自分が嫌だったが、外出自粛となれば俳句は外に行かなくても家の中や玄関先で作れるということ、有無を言わさず締め切りも来るということで、やらなければならない=やることがある、頭の中が暇ではなくなる。私もYouTubeカラオケで旭様の自動車ショー歌を歌ったりしていたんだけれど、それだけでは到底持たなかった。

 ただ句会は当然休会になる。みんなで投句・選句・合評、ができなくはなる。句会とはどういうものかというと…

  • まず参加者が作った俳句を無記名で短冊に書いて出す=投句。(投句数は決められている)
  • 短冊を回して好きな句を書き写す。書き写した中から決められた数に絞る=選句。
  • どの句に何点入ったか集計し、主催者と皆で評価しあう=合評。

 事前の散策(吟行)を含めれば6時間とかやっているのである。散策して弁当を食べるのはもちろん楽しい。でもコロナで、それらはできなくなったのだ。ところが世の中にはすごい人がいてこのシステムをリモート化し、ネット投句に選句、自動集計するソフトを全国に無料配布してくれた。おかげで日本の句会は、毎週締め切りに追われる苦しみなんだか楽しみなんだか、に困ることもなかった。

 それでこの締め切りに追われる趣味をなぜ始めたのか、と言えば、最初は雑草にはまったのがきっかけだ。バス停などに生えている稲みたいな草が食べられるのか気になって仕方なく、そのうちそれにくっついている虫も気になるようになった。雑草の名を調べたりしていると、道端の名もなき雑草はだいたい季語事典にも載っている。季語事典のすごさを知る。それは気候、地理、風俗、キリスト教仏教神道、動植物の歴史民俗学事典だった。魅せられた。ホットケーキ(冬)から踏み絵(春)まである。

 学生時代は現代詩の同人だった。国文の1組と2組とで、同人誌を出していた。就職すると発行人は、仕事中に会社に皆の原稿などを届けに来てくれてほのぼのしたものだが、やがて解散となった。そもそも私は怠慢なのか詩がどんどん短くなっていって、書く場も消えて、ついに17文字に手を出した。もちろんたった17文字という難しさは、てにをは一つ「なんとなく」つけてはいけないものなので、短くする苦しみがある。それが面白い。俳句人口が減っていても増えていても、ながーく飽きたこともなくやっているので、ブームは関係はない。

 もしよければ立ち読みで、「名句集100冊から学ぶ俳句発想法」(草思社)、私の句集もあるので見てみてくだされば嬉しいです。「俳句七十二候」(NHK出版)にも一句あります。

(会報13号掲載「寄稿」より)

川島さんの俳句

ボクシングジムごと枯れてゐたりけり

夜業して船人のごと星を見る

『草に花』  山田さん(川島葵)の作品は、俳句の本にも取り上げられています。『名句集100冊から学ぶ俳句発想法』(草思社)は、名句集や賞をとった句集、話題の句集など古今の 100冊を選び、作句のヒントを提供する本。テレビ等でも活躍する夏井いつき氏『伊月集 梟』などとともに川島さんの句集『草に花』から「冬晴るる夕べの夢の高さまで」など多数の句が紹介されています。

 また、俳句づくりで知っておきたい「五日ごとの季節の名前」を、句とともに解説している『季節と出合う 俳句七十二候』(NHK 出版)には「引き抜きし一冊に秋立ちにけり」などが紹介されています。ぜひ読んでみてください。(会報編集担当)

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